naranoasuka’s blog

総ての世界に通じる道理に関して追求するブログです

【生と死の境】

 整形外科病棟にいた時、私は何度も奇跡的な瞬間に遭遇することがありました。ある20歳ぐらいの若い女性の話です。

 

 彼女は繁華街でナンパされ、ナンパされた彼の車に乗っていました。運悪くその車は事故を起こし、彼女は瀕死の状態で私の勤務する病院に運ばれてきました。頸椎損傷で上部の損傷のため、自力で呼吸することが出来ません。気管切開され人工呼吸器を装着したのです。頸椎を固定するため、頸椎固定術がされました。

 

 頸椎の安静と保護のためハローベストで彼女の頭部~頸椎は固定されたのです。ハローベストとは、語彙から受ける感じでは明るいですが、頭蓋骨にドリルで穴を開けて固定し装着するのです。PMT・MR/CTハローベストシステム-欧和通商株式会社- (ohwa-tsusho.com)

 

 彼女の家族への説明は、頸部損傷のため一生歩くことは出来ないでしょう。何とか呼吸器で生命維持は出来ていますが術後の経過を見ながら、対応していきます。という絶望的な内容でした。彼女の父親は、県外でしたが毎週お見舞いに来ていました。覚醒しない娘の手を握り娘の顔をじっと見つめていました。

 

 そんな状態は数か月続きました。誰も言いませんが、我々スタッフはきっと彼女は植物人間になってしまうのでしょうと思っていたに違いありません。私の夜勤の時、動くはずのない彼女の足がかすかに動いたのです。覚醒していない彼女に向かい、足が動いたね!感覚があるの?と私は呼び掛けていました。

 

 その事を申し送りで伝えたのです。それを聞いた看護師は信じてくれませんでした。それから1週間ぐらいたった時です、他の看護師にも判るぐらいはっきりと彼女の足は動いたのです。それからは病棟中大騒ぎでした。医学的ではありえない事です。

 

 彼女は永い眠りから覚醒しました。なんと私が彼女の足が動いたことを見つけた最初の発見者だったことを彼女は知っていたのです。それ以後彼女は劇的に回復しました。なんと松葉づえで歩けるまでになったのです。

 

 手術のためスキンヘッドだった頭に、髪の毛が生えそろいました。目鼻立ちが整い美しい顔立ちの女性です。呼吸器も外れ自発呼吸となりました。しかし今後あちこちの傷を目立たなくするために何度も手術が必要です。そんな彼女でしたが、無事に退院したのです。退院の時に、病棟の看護師一人一人にお手紙をくれました。

 

 彼女の手紙には、心からのお礼の言葉がありました。私は人間の可能性は無限だと信じております。あきらめたらそれでおしまいです。今までの経験から、検査の数値などは当てになりません。ハッキリ言って気にしなくとも良いのです。だって一生歩けませんと断定された彼女が松葉づえで歩いて帰ったのですから。