私が病院勤務の時の話です。時々救急外来(ER)の担当になっていました。ある40代位の男性が救急車で運ばれてきたのです。その男性は呼吸困難状態でした。緊急で全ての検査を終えたのですが原因が全く判りませんでした。
そのため適切な処置が出来ず(いろいろな方法を試しましたが効き目がありません)結局ICUへ運ばれ、男性は生死をさまよっていたのです。そんな状態の時、ある医師は男性に質問していたのです。どこか渡航歴はありますか? 「中国に行っていました。そういえばワタリガニを食べました」と男性はゼイゼイしながらも話したのです。
その医師は男性の話からピンときたのでしょう、情報を集めて似た症状の疾患を調べたのです。何とカニに寄生する寄生虫が原因だと判ったのです。再度胸部のCTを撮影し、驚愕したそうです。何と男性の肺には寄生虫が卵を産み付けたのでしょう、その卵が孵り寄生虫がウジャウジャ肺にいたのです。
カニ好きの男性 肺に細長い寄生虫が発見される(中国) (2020年5月1日) - エキサイトニュース (excite.co.jp)
それから適切な処置がなされ、男性は無事に九死に一生を得たのです。発見が遅れていれば命はなかったでしょう。まさに奇跡でした。病院にいると奇跡に遭遇することも多いです。その度に私は人間の生命力の神秘に驚かされていました。
奇跡的に助かった男性は、退院時に挨拶に来られました。「もうこれからは人から勧められても、ワタリガニみたいな珍しいものは食べません。懲り懲りです」と仰っていました。
普段あまり食べられないものを食べる時は、覚悟を決めなければですね。なんせ命がけとなるかもです。