救急外来にいた時に起きた出来事です。救急隊員からのホットラインが鳴りました。
いつもなら、現場の状況・急患の方の情報やバイタルサインの報告があるはずなのですが…
その時は違っておりました。
「交通事故による被害者と加害者を受け入れて頂きたい」と言われたのです。その時の救外担当医は「どちらか一方にしてもらえ!」と返事しました。しかしどこの病院も受け入れ困難だと訴えられたのです。その当時救急隊員に「お宅の病院は最後の砦なんです」と言われていました。
直ぐに交通事故の二人は搬送されてきました。それからが修羅場でした。
お二人のご家族は待合の廊下にいました。
被害者の家族は「何で加害者を助けるんだ!助けるな!」と大声で怒鳴っています。
そばに加害者の家族もいました。
被害者の家族は「殺してやる!」と叫びながら、加害者の家族につかみ掛かっています。
私一人の力でこの場を収めることは、無理と判断し警察に連絡しました。直ぐに警察は来てくれて何とかその場は収まりました。
皮肉なことに、被害者は亡くなり加害者は助かりました。
今回の件で、私はとても苦しみ悩みました。
結果だけを見れば、当然加害者が悪です。
最悪の結果となってしまいましたが、事前に防ぐことは出来なかったのでしょうか…
それぞれの方の運命の輪が、何かのはずみで絡んでしまったのでしょうか…人間レベルでは答えは出ません。どんなにキャリアの方々が机上で話し合いをしていても答えは出ません。馬の耳に念仏です。事件は現場で起きていますから…