naranoasuka’s blog

総ての世界に通じる道理に関して追求するブログです

【救えなかった幼い命】

 今でこそ、幼児虐待は世間に知られています。それでも尊い命を救えないケースはありますよね。私は病院勤務の中で、今でも心が痛む出来事があったのです。何とか救えなかったのだろうかと、幼い命を。


 私が整形外科病棟勤務だった時の悲しいお話です。糖尿病の70歳代の女性が入院してきました。彼女は歳より老けていて、疾患により視力をほとんど失っていたのです。   ある日お部屋を訪ねると、彼女の両手をそれぞれつかんだ二人の可愛い子供達(小学校に通っている兄と妹)がいました。

 

 「お孫さんですか?」と私は声を掛けたのです。「この子達には、母親がいません。母親は男をつくって出て行ったのです。私がこの子達の母親代わりです。早く退院して帰らないと、この子達のご飯を作ってあげないと…」と悲しいお顔で話されました。

 

 彼女の病気はかなり進行していて、治療が必要でした。ましてや盲目状態で食事を作るなんて… 私は嫌な予感がしたのです。

 

 夜勤の日、消灯に回った時の事。彼女の部屋に入り私は驚きました。なんと男の子が廊下で寝ていたのです。その子はお孫さんでした。私は彼女のご自宅に電話しました(息子と孫二人と4人家族と聞いていたから)

 

 「もしもし私は~病院の看護婦の~です。~様のお宅ですか?」「はいそうです。」と可愛らしい女の子の声でした。「お父さんいますか?」と聞いてみたのです。電話の向こうで、男性の声がしています。多分父親の声でしょう。「お父さんいるけど、いません。お父さんがいないと言えと言ってるの」「わかったわ。お父さんに息子さんをお迎えに来てねと伝えてね」とお願いしたのです。私は夜勤のためお迎えが来るのをしばらく待っていました。でも男の子の父親は迎えに来なかったのです。

 

 私は患者さんの彼女と男の子と少しお話してみました。「僕、家に帰りたくない!」と寂しそうな顔で訴えるのです。彼女は重い口ぶりで話し出しました。「実は… 息子は娘を可愛がるのですが、この子には暴力を振るったりするのです」「私が早く退院して孫達の面倒を見てあげなければ」と話されました。

 

 「確かに先ほどご自宅に電話させていただき、息子様の対応を見ていると、お兄ちゃんに対して厳しいですね」彼女に「他に連絡できる方はいませんか?」と聞いてみました。「息子がもう一人います」「その方に連絡してもよろしいでしょうか?」と私。

 「連絡してください」と彼女。

 

 私は思い切って、もう一人の息子様(弟)に連絡しました。「もしもし、私は~病院の看護婦の~です。」細かく事情を説明させていただいた。「家には生まれたばかりの赤ん坊がいるのです。お迎えには行けません。迷惑です」と弟様のお嫁様?から厳しい言葉をぶつけられました。

 

 私は途方に暮れながらも、他のスタッフに相談したのです。後は警察しかない… 
私は警察に連絡しました。細かい事情を説明し、保護していただくよう依頼したのです。その後も男の子は、毎日小学校から病院の彼女(おばあちゃん)の所に通ってきていました。そのたびに、警察が保護してくれました。

 

 しばらくして、彼女の主治医は「~さん、明日退院させるからね」とスタッフに説明があったのです。私は主治医に「彼女はほとんど眼が見えません。その彼女を自宅へ帰すなんて… どこか施設に入って頂いたほうがよろしいのでは」と訴えたのです。「本人が退院させてくれと言ってるんだぞ、退院させるから」と主治医。

 

 私は彼女に退院を思いとどまるように説得したのです。しかし彼女は「私が孫達のご飯を作ってやらなければ孫達がかわいそうだ」と言い張って、強引に退院してしまいました。その時私は暗くて重い嫌な予感がしました。

 

 とにかく、彼女に火の元だけは十分気を付けて下さいね!と何度も何度も繰り返しお話しするしかなかったのです。そんな彼女を見送りました。糖尿により、視力を失い強引に退院してしまった彼女と、2人の子供達は今頃どうしているのかなと気にしておりました。

 

 そんなある日の朝、朝刊を読んでいるとある記事が眼に飛び込んできたのです。『 ~月~日。~市の住宅で火災発生。住宅は全焼。焼け跡から3人の遺体が見つかった』と。3人の写真が載っていました。その顔に見覚えがありました。彼女と2人のお孫さんだったのです。

 

 新聞記事によると、近所の方達が心配して、児童相談所に連絡したそうです。そして2人は明日養護施設に入所予定だったそうです。2人の子供達はおばあちゃんと離れたくなくて入所を嫌がっていたようです。

 

 男の子の名前は、新聞記事によると光君でした。どうか2人に来世があるのなら… 今度また人間として生まれ変われるのなら、愛ある幸せな夫婦の元に生まれさせてあげてください…そう願わずにはいられなかったのです。名前の通り今や光となった子供達は、今頃は大好きなおばあちゃんと共に天国で幸せに暮らしているのでしょうか。それともすでに幸せな夫婦の元に生まれ変わってきてくれてるのでしょうか。